新講座「モノづくり現場の基礎~5S・安全・品質」 /新鬼平随想録[第9回]

*2023年11月9日(木)

落ち葉散る頃となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は、

  • 来年2月開講、eラーニング「モノづくり現場の基礎~5S・安全・品質」のご紹介
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」
    第9話

について、ご案内いたします。ぜひ最後までご拝読いただければ幸いです。

「モノづくり現場の基礎~5S・安全・品質」




2024年2月より、「5S」や「安全」、「品質」について、工場内の各職場を見ながら勉強できるeラーニング「モノづくり現場の基礎~5S・安全・品質」が、開講いたします。

【講座の特徴】
  • 全編、上司と部下の会話形式で解説します。
  • 入社半年の小森君が製造課長の才田さんと工場内を回りながら、勉強していくストーリーです。
  • 工場内でのあらゆる場面での業務ルールや進め方を5Sの考え方と関連付けて解説します。
【著者プロフィール】
    別所 義夫 先生
      電機メーカーの生産技術開発部門、営業部門、工場生産技術部門などで勤められ、その後関連会社では現場改善指導や研修講師など、従業員教育に尽力されてきました。
    <著者からのメッセージ>
      この講座でお伝えしたかったことを一言で言うと『気づき』です。
      「何か変だな」「おかしいな、いつもと違うな」という気づきが、『安全、品質、生産性』などの不具合を見つけるきっかけになります。この「変化に気づく」には、「現状を見る目」を持ち、「あるべき姿、理想の姿」を考え、そのギャップについて「なぜだろう?」と考えることが大切です。
      5Sは、現状を知り、あるべき姿を考える手段ともいえます。
      この講座は、5SやQC7つ道具の個別内容を説明するテキストではありません。
      5Sの目を通して、工場のさまざまな部門・場面で起る課題に対し「何か違う、変だな」と気づき、「あるべき姿は何か?」を読者と一緒に考えることを目指しています。
      初めてモノづくり現場に入る人から現場を経験した人など、誰にでも分かるような平易な事例と言葉で、具体的に紹介しています。
      モノづくりに従事するさまざまな方に、『気付き』の重要性が伝わり、「何か変だな、なぜだろう?」と自ら考える事の大切さが伝われば幸いです。
      これが、日本のモノづくりを支える姿勢につながるのではないかと思います。

カリキュラム

    第 1 章 5Sについて
    第 2 章「モノづくり」について
    第 3 章 職場の5S
    第 4 章 工程の5S
    第 5 章 安全と品質を守る現場のルール
    第 6 章 職場の情報セキュリティ
    第 7 章 設備・治工具の5Sと安全
    第 8 章 工場の5Sと安全
    第 9 章 品質管理






鬼平犯科帳連載について

JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」を1話ずつお届けします。息抜きにご一読いただければ幸いです。

作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



第9回 消えた男

    第69話『消えた男』(『オール読物』昭和48年9月号。文春文庫10巻)は、平蔵が歴代のやる気のない長官と全く違う長官であったことを描く。
    筆頭与力・佐嶋忠介は、市中巡回の途中、防火の神を祭る愛宕神社に参詣し、そこで8年前に改め方・同心を辞めた高松繁次郎とばったりと会った。当時の改め方長官は二人の組頭である堀帯刀たてわきであったが、長官は労多くして得るところが少なく、私財も投入せねばならぬ御役目であり、堀もやる気がなかった。やる気がある二人は当然仕事がやりにくくなり、高松が佐嶋に置手紙をし、失踪してしまった。
    そんな高松であったが、佐嶋は近くの芝・神明の小料理屋・弁多津べんたつに誘った。酒が入ると高松が今の長官はどんなお方かと聞くので、佐嶋はいろんな事件のたびに発揮される平蔵の力、部下をはじめ盗賊に及ぶ深い思いやり、私財をかたむけつくして探索の費用に当てるいさぎよさを一刻半(3時間)も語った。高松はそれを熱心に聴き入り、聴き終えると、今のお話は伺わなければよかったと眼を伏せた。
    佐嶋は7日後の再会を約して別れたが、すぐに高松へ伝えたいことを思い出し、その後を追いかけると、闇の中からうめき声が聞こえ、抱き起こすと男は息絶えた。近くに抜身ぬきみと弁多津の提灯が落ちており、襲われた高松が刀を奪い、斬ったのであろう。そう思いながら近くの大名家に頼み、死体を改め方に運んでもらった。
    改め方に着いた佐嶋は、長官に今日のことを報告した後、8年前のことを説明した。当時高松は凶賊・蛇骨じゃこつの半九郎一味の探索に日夜の区別なく打ち込んだ。その結果、一味の下働きの女・お杉が、血にまみれたつとめを働く蛇骨と内縁の夫・笹熊の勘蔵と別れたくなり、元女賊のお百に相談する。その紹介で会った高松が、隠れ場所と1、2年の暮らしのお金を用意するので、引きかえに盗人宿を教えてくれといい、お杉が承知した。上司の佐嶋も三十両程を出してほしいと堀長官に直訴したのだか、拒絶され、高松は改め方を辞した。ただし一味がお杉の動きを察し、殺そうとするので、高松が彼女を救うため一緒に逃げたことまでは、佐嶋も知らない。
    翌朝平蔵の命令で十二名の密偵か集まり、死体を検分したところ、粂八くめはちがこれは蛇骨一味の笹熊で、8年前自分のいた野槌のづち一味にすけばたらきにきたという。この後平蔵は佐嶋と粂八を部屋に呼び、佐嶋に高松の話をさせると、粂八は更に思い出し、笹熊が女房を奪った奴を探し殺すといっていたし、住んでいた南品川のろうそく屋・六兵衛の二階にも行ったという。
    その日の昼過ぎ、粂八がその六兵衛を訪ねると、半月前に高松がきて、お杉は死に、父親の墓のある中目黒・松久寺に納骨し、近くに居るというので、3日前にきた笹熊につい話したが、昨日から甥の身を心配しているという。
    この報告も受けて平蔵はある決心をして松久寺の高松を訪ねると、六兵衛の刺客とみた高松は短刀で鋭く襲ったが、ひざ頭を打たれて転倒した。その上で平蔵は名乗り、その方は8年間二人でつとめばたらきをしただろう、しかし罰するつもりはない、前の改め方にも罪がある、その代り密偵となり、俺を助けてくれぬかと頼んだ。
    こうして高松は密偵となったが、お杉の傍の小屋に引き続き住み、この年の秋から翌年の夏にかけて大活躍し、五組の盗賊逮捕に貢献した。しかしその夏に高松は小屋で斬殺された。これは六兵衛の雇った仕掛人の仕業であるが、六兵衛は5日前に逃げていた。平蔵は「おれとしたことが、油断するとは」と残念がった。
    この年の秋、松久寺に高松とお杉の立派な墓ができた。建てたのは平蔵である。そして平蔵は二人のために永代供養の金子も収めたという。
    なお『啞の十蔵』以降、平蔵が部下と共に命を懸けて危険な公務を行う姿を書いてきたつもりだか、次回は池波正太郎が何故このような物語を書いたのかを述べてみたい。




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2023年11月9日