労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しの促進を-「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(厚生労働省)から-
*2022年7月7日(木)
政府の「人的資本」への投資について、6月29日に発表された厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」から、その概要を紹介します。
1.OFFーJT・「自己啓発支援」を強化する必要があります
- これまでの日本企業は、OFF-JTよりも、OJTを重視し、上司や先輩による指導を通じた実際の業務に即して学ぶことで、「現場力の高さ」を生み出してきました。
- 近年、組織・人員構成の変化や、リモートワークの急速な浸透により、働き方の自由度が増したことにより、上司や先輩の仕事を見て新しい能力・スキルを身につけるOJTの機会が減少しています。
- また、ビジネスに関わるあらゆる場面で、デジタル技術の活用が求められる技術革新が進み、グローバル経済の中での競争力の激化など、企業は急速かつ広範な変化に直面しています。このような変化は、企業内における上司や先輩の経験や能力・スキルの範囲を超えるものであり、OJTのみの人材開発では対応しきれない状況となっています。
- しかし、OFF-JTや「自己啓発支援」の費用は、日本ではGDP比で0.1%であり、米国では2.08%、フランスで1.78%(数値は2010~2014年)と諸外国に比べて大変低くかつ近年は低下する傾向にあります。
- 世界各国において、持続可能性と「人」を重視することで、新たな投資や成長につなげる動きが進む中、日本においてもDX時代の到来に向けて、OJTの強化だけでなく、OFF-JTや「自己啓発支援」を充実・強化する必要があります。
2.自律的・主体的な学び・学び直しの重要性が増しています
- 急激な経済・社会環境の変化が進む中で、労働者は新しい成長分野の体系的な専門知識・スキルに加え、正解が見通せない仕事に対応するために必要な問題発見・解決能力が期待されています。
- 女性活躍をはじめ多様な人材の活躍(ダイバーシティ&インクルージョン)が求められることで、労働者のキャリアの多様化が進んできます。個々多様な能力やスキルを身につけるために必要な学び・学び直しの内容も個々に異なるため、労働者は自らの状況をふまえ、自律的主体的に取り組みしていく必要があります。
- こうした2点をふまえ、OJTやOFF-JTを再定義し、自律的・主体的な学び・学び直しに対する意欲を喚起し、取組を継続させるような「伴走的な支援」が重要となります。
3.学び・学び直しにおける労使の「協働」は現場リーダーの役割です
- 学び・学び直しを労働者本人と企業の持続的成長につなげるために、企業がめざすビジョン・経営戦略やこれらをふまえた「人材開発方針」を労使が共有し、協働して取り組むことが労働者の学びに対する動機付けにつながります。
- 必要となる能力・スキルの方向性と個々の労働者の学び・学び直しの方向性・目標について、労使の「擦り合わせ」が必要です。
- 個々の労働者の自律的・主体的な学び・学び直しは、労働者任せにすることではなく、学び全体の後退や個々人の取組の差につながらないように、企業による労働者への伴走的な支援が重要です。
- このためには、管理職等の現場リーダーが人材開発の視点に立って、個々の労働者と双方のコミュニケーションを強化していく必要があります。
- 現場リーダーに部下を育成する時間的余裕やマネジメント能力を強化する余裕がない状況を脱却するために、企業は現場リーダーを支援する必要があります。
4.学びのプロセスのポイントは3つです
1)企業は職務に必要な能力・スキル等を可能な限り明確化し、学びの目標を労働者と共有します。
- 学びの目標は、経済・社会環境・企業活動の変化や労働者のライフステージの変化に応じて見直していきます。
- さらなる学びの継続やキャリア形成につなげるため、労働者が節目ごとにこれまでのキャリアを振り返り、自身のキャリア・意向・適正を把握できるように支援していきます。
2)企業は労働者の雇用形態にかかわらず、学び・学び直しができるように、これまで以上に、教育訓練プログラムの提供・情報提供をはじめとした機会の提供、時間の確保、費用の支援などの学び・学び直しの環境整備や支援が重要となります。
- 外部の教育訓練プログラムの活用も重要です。
3)労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを後押しするための伴走的な支援策を展開します。
- キャリアコンサルタントによる伴走支援を受けることができる機会を確保していきます。
- 学びのモチベーションを高め、次に継続していくために、学んだ能力・スキルを発揮することができる場の提供や適切な評価を行うことが重要です。
- 持続的なキャリア形成を支援する観点から、キャリアについて考え、労使で話し合う機会を積極的に設けていき、学んだ成果や活かされるような多様な選択肢(社内公募制や副業・兼業等の機会)を確保することも大切です。
5.「学びの好循環」を実現しましょう
- 労働者が自律的・主体的な学び、学び直しを継続的に行うための協働する仕組みづくりには時間と労力がかかるが、これにより学びの気運や企業文化・企業風土が醸成・形成されれば、その後の変化に対しても、学びが自走的に対応していくことが期待されます。
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2022年7月7日