技能実習制度は育成就労から特定技能へ… /新鬼平随想録[第51回]

*2024年9月12日(木)

九月に入っても残暑厳しい日が続くなか、虫の声に秋も感じます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は、

  • 外国人の方への技能検定、日本語能力検定
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」
    第51話

について、ご案内いたします。ぜひ最後までご拝読いただければ幸いです。

技能実習制度は「育成就労→特定技能」へ。
準備は早めが肝心。
外国人材の定着に1級・3級の認定訓練の活用をお勧めします。



30年近く続いてきた技能実習制度が廃止され、新たに日本の人手不足に対応する人材育成と人材確保を目的とする「育成就労制度」へと変更されます。日本で働き続けてもらうため、「育成就労」で来日した外国の方には、3年後には一定の専門性を持つ「特定技能」の水準まで技能を習得してもらう仕組となっています。

特定技能はもともとある在留資格ですが、対象の業種にばらつきがありました。新たな制度では育成就労と特定技能は一体のものと捉え、見直しされます。
製造業分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)は、特定技能1号に加えて、特定技能2号の対象となったことで、在留期限の心配をすることなく、外国人材に日本のモノづくり分野で長く活躍してもらうことが可能となりました。

技能実習制度では不要だった初級レベルの日本語能力試験の合格や講習受講が「育成就労」では必要となります。
日本語能力水準と共に、技能水準が以下のように求められます。

  • 特定技能1号 初級技能者のための試験である技能検定3級相当の合格水準
       日本語は、日本語能力検定N4レベル以上
  • 特定技能2号 上級技能者のための試験である技能検定1級相当の合格水準
       日本語の試験はありません。

特定技能の技能水準確保に、JTEX認定訓練の活用をお勧めします

技能水準の確保ですが、慣れない日本語での技能試験学科の受験は、外国の方にとって、ハードルが高いものとなります。そこで、JTEXの認定訓練講座のご活用をお勧めします。
3級コースは出題頻出度の高い過去問題を選び抜いて、外国人労働者にも理解しやすいように工夫されていますので、技能実習2号を修了し、特定技能1号資格を得るための支援策としてご活用ください。
特定技能2号では、技能検定コースと試験を受けるコースの2つのルートが用意されています。技能検定コースでは、1級コースを活用することをお勧めします。このコースを修了することで、技能検定の学科試験が免除されますので、じっくりと1年をかけて取り組んでいただき、技術知識も同時に深めることができます。特定技能2号資格を得るための支援策としてご活用ください。

  

<3級技能検定対策科コース>
  • 本コースは、機械保全科・機械加工科・機械検査科・電子機器組立科の4コースです。
  • 本講座は東京都認可の認定訓練です。法制上、3級は学科試験免除にできないため、直接、技能検定試験を受けていただく必要がありますが、認定訓練講座受講という記録を残せます。
  • 本コースのテキストは、技能検定3級でよく出題される過去問題に焦点を当てた学習内容で、学習内容をしぼり、この内容で覚えていただくことで、確実に合格に近づくことができます。
  • テキスト内のすべての漢字は平仮名がふってあり、外国人労働者を対象として随時3級の受検準備に活用できるように編集されています。
  • 学科試験に加えて、実技試験の概要もわかる補助教材がついています。
  • レポートは択一問題形式でWeb提出ができます。
  • 【修了証書】



<1級技能士 学科試験免除コース>
  • 本コースは、機械保全科(機械系保全作業)・機械保全科(電気系保全作業)・機械加工科(普通旋盤作業/数値制御旋盤作業)・機械検査・電子機器組立の6コースとなります。
  • 本コースは、職業能力開発促進法第24条に基づいた認定訓練講座で、修了者は技能検定の学科試験が免除されます。技能検定では実技試験のみ、受検してください。
  • テキストは各科目全6冊で、各職種の詳細な解説があります。レポートは択一問題形式でマークシートでの全6回の提出となります。
  • レポート問題全6回を提出後、3日間のスクーリング出席があります。3日目の午後に修了テストを受けます。
  • 日本語能力がテキストを読むところまで行かない外国人労働者の方に対しては、レポート提出について、テキストの読解のサポートをお願いします。
  • レポート提出を終え、スクーリングに出席いただいた方はほぼ合格されています。
  • 【修了証書】






日本語能力の向上支援は、TRY!日本語JLPTシリーズ」で

JTEXでは、日本語能力検定対策は、eラーニングコース「e:TRY!日本語JLPT」シリーズでご支援いたします。

    e:TRY! 日本語JLPT N1/N2/N3/N4/N5&START
    • 本シリーズは、目標とする日本語能力試験(JLPT)のレベル別の5コースとなります。
    • 段階的に上のレベルにステップアップしていただき、日本語の実力を継続して高めることができます。
    • 文法・読解・聴解と、すべてをカバーしているオールインワン教材です。
    • 日常生活の様々な場面の中で、日本語がどのように使われているかを感じられるよう、多様なタイプの日本語を動画と練習問題を通して学びます。







鬼平犯科帳連載について

JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」を1話ずつお届けします。息抜きにご一読いただければ幸いです。

作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



第51回 越中・井波―わが先祖の地(四)

    引き続き池波の随筆「越中・井波」の原文と備考をお読み頂きたい。

    〔原文〕堂々たる入母屋いりもや造りの山門さんもん、大屋根の本堂、太子堂たいしどうなど、その大伽藍だいがらんのすべてに、「隙間すきまもないほどに……」さまざまな木彫がほどこされている。さすがに井波の大寺院だ。私の祖先も、この寺の改築には動員されたのではあるまいか。

    〔備考〕瑞泉寺は天正9年(1581)、佐々さっさ 成政なりまさ焼討やきうちされたが、以後155年の年月をかけて、江戸時代の元文元年(1736)に復興された。しかし宝暦12年(1762)、強風下の町家の失火に類焼してしまう。復興は弘化4年(1847)で、85年の歳月を要した。ところが明治12年(1879)、太子堂から出火し、山門、勅使門ちょくしもん、台所を除き、焼失する。その後55年の努力を重ね、昭和9年(1934)、瑞泉寺は三度みたび、復興を成し遂げる。

    次にこの様な復興は宮大工の活躍なしに語れないが、その概要を述べれば、以下の通りである。

      1.天正の戦火からの復興――慶長元年(1596)、砺波となみ射水いみず婦負ねい郡の領主・前田とし ながから拝領はいりょうした井波の土地に瑞泉寺の仮本堂が建立された。棟梁とうりょうは板倉屋四郎右衛門であった。また文禄3年(1594)、利長の工兵隊こうへいたいの大工10人も井波に土地を拝領したが、彼らは子孫も含め瑞泉寺の復興に貢献してゆく。しかしその後瑞泉寺が教如上人の東本願寺へ転派てんぱしたので、本堂の建立は大変遅れ、万治2年(1659)となった。棟梁は越前・笠井清右衛門であった。次いで元禄10年(1697)、大門だいもん上棟式じょうとうしきが行われる。棟梁は金沢の山上新蔵であった。その後本堂の修復工事がいろいろと行われたが、元文元年(1736)、最後の鐘楼堂が竣工した。棟梁は山上新蔵の弟子・金屋岩屋村・孫四郎であった。

      2.宝暦の大火からの復興――安永3年(1774)、本堂の上棟式が行われた。棟梁は京の笠井若狭、名代みょうだいはい 領地りょうち 大工だいくの子孫・柴田清右衛門であった。そして彼と茶屋甚作、同仁左衛門、田村七左衛門の拝領地大工が初めて本堂の彫刻を行った。次に寛政2年(1790)、鐘楼堂の上棟が行われる。棟梁は京の柴田新八郎、したの棟梁は拝領地大工の田村七左衛門であった。次に長谷川平蔵が活躍していた寛政4年(1792)、現存する勅使門の柱が立った。棟梁は柴田清右衛門で、田村七左衛門が門扉両脇の「獅子の子落こおとし」を彫っている。次に文化6年(1809)、現存する大門の上棟式が行われた。棟梁は拝領地大工の2代目松井角平・つねのりで、京の前川三四郎が「雲水一匹龍」のから 狭間さまを彫っている。最後に弘化4年(1847)、親鸞しんらん上人の尊敬された聖徳太子を祭る太子堂が初めて建立される。棟梁は3代目松井角平・恒久つねひさで、江戸の清水 すけも「鶴亀」の手挟たばさみ ( 御拝柱ごはいばしらの内側の上部を飾る彫物)2枚を寄進している。

      3.明治の大火からの復興――明治18年(1885)、本堂が上棟される。棟梁は4代目松井角平・つね ひろであった。次に大正7年(1918)、太子堂の落慶法要が行われる。棟梁は5代目松井角平・つねのぶ、副棟梁は拝領地大工の東城清八、南保新八郎であった。大島五作と加茂辰蔵が手挟「桐に鳳凰ほうおう」を各々おのおの1枚、田村与八郎と横山作太郎が手挟「波に龍」を各々1枚彫っている。次に昭和7年(1932)、瑞泉寺婦人部の力により鐘楼堂が再建される。棟梁は6代目松井角平・つねしげであった。最後に昭和9年(1934)、小松こまつ天皇500回忌法要に向けて瑞泉会館が完成する。棟梁は同じく松井角平・恒茂であった。

    以上であるが、そこで改めて冒頭の原文を読んでみると、池波は初めて見る瑞泉寺の建物の壮大さと彫刻の精密さに感心した様に思える。しかしそれだけではあるまい。その建物や彫刻を作った、何代にも渡る多くの無名の大工達、木を切り、庄川に流し、井波に運んだ、何代にも渡る多くの無名の職人達、瑞泉寺に寄附をした何代にも渡る多くの無名の信徒達に、池波は深い感動を覚えたに違いない。そうでなければ、私の先祖もこの寺の改築に動員されたのではあるまいかという池波の言葉は、理解できないのではないかと思われる。

    〔原文〕昼食は、瑞泉寺の客間で精進料理の馳走になる。給仕きゅうじをしてくれたのは、この町で茶の湯を習っている女子高生たちであった。茶の湯の先生が、「実習をさせたいので」と、申し出て下すったのだそうな。いずれも清らかな少女たちで、その給仕ぶりはさすがに美しい。おもいもかけぬ目の保養をしてしまった。

    〔備考〕先祖が改築にたずさわった瑞泉寺で、池波に伝統的な精進料理を昼食として召し上ってもらおうとする配慮は、井波ならではのものと感じられる。また初めて先祖の地・井波を訪問した池波を歓迎し、茶の湯の実習という負担のない形で、昼食の給仕をして差し上げるという配慮も、井波ならではのものと感じられる。(続く)





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2024年9月12日