新講座「物流現場の改善講座~ヒューマンエラー対策」/新鬼平随想録[第13回]

*2023年12月14日(木)

陽だまりがことのほか暖かく感じられる寒冷の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は、

  • 2024年5月開講の「物流現場の改善講座~ヒューマンエラー対策」のご紹介
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」
    第13話

について、ご案内いたします。ぜひ最後までご拝読いただければ幸いです。

2024年5月「物流現場の改善講座~ヒューマンエラー対策」が開講します!



物流における災害・ヒューマンエラー
    物流現場において災害・ヒューマンエラーが多く発生しています。倉庫・配送センターにおける荷役災害・ピッキングミス・誤出荷、配送・納品時における商品破損・交通事故・誤納など、これらの災害・ヒューマンエラーは時に社会に影響を及ぼし、人命にも関わります。
    物流は、輸送(配送)・荷役・保管・包装・流通加工・情報管理の6つの活動によって成り立っており、それぞれが密接に関連しています。例えばピッキングミスによって誤出荷が起こる、情報システムエラーによって出荷停止になるなど、1つの活動に支障が出ると負の連鎖が起こります。
    このため、災害・ヒューマンエラーを防止し、安全かつ正確な物流を維持しなくてはなりません。
2024年問題以降の持続可能な物流のあり方
    近年物流業界で懸念されている「2024年問題」に対応する意味でも、現場の改善に取り組む必要があります。「2024年問題」とは2024年4月より適用される、トラックドライバーの残業時間の上限規制(年間360時間)のことです。物流業界は、慢性的な人手不足が続いており、この労働時間の上限が加わることで、安定的な輸送がさらに困難になると予想されています。
    「2024年問題」を乗り越えるためには、物流現場の非効率性を改善し、生産性を向上させる取り組みに着手しなければなりません。すでにリードタイム延長による輸送条件の改善、共同配送による輸送方法の見直し、パレットの標準化による荷役時間削減や、バース予約システムによる荷待ち時間短縮など、生産性向上に向けた検討が国レベルで始まっています。
    こういった事業者目線での大規模な取り組みだけではなく、現場レベルでもできることは多くあります。人手が不足しても安全を守り、働きやすい職場環境の構築はもちろん、作業の標準化、5Sなど、現場のムダを見つけ改善する取り組みが、より一層求められています。
災害・ヒューマンエラーの防止
    災害・ヒューマンエラーは人間の行動特性や、危険に陥りやすい外部環境などの要因を理解し、正しい対策を取ることで防止できます。本講座では物流の工程ごとに起こり得る災害・ヒューマンエラーの種類と発生動向を把握し、具体的な対策を事例から学びます。また、現場の非効率性を改善する取り組みやITシステム導入によるエラー防止策にも着目し、業務改善につなげます。
    「2024年問題」以降の安全で持続可能な物流を目指し、現場の改善に取り組みましょう。

カリキュラム

    【1か月目学習】

    第1章 物流と社会との関わり

    • 1.物流の現状と課題
    • 2.物流のヒューマンエラーが社会へ及ぼす影響

    第2章 物流とヒューマンエラー

    • 1.ヒトの行動特性とヒューマンエラー
    • 2.物流エラーの種類と発生動向
    • 3.物流業務に関係するヒューマンエラー
    【2か月目学習】

    第3章 物流業務の改善とその具体策

    • 1.物流業務のヒューマンエラー対策
    • 2.組織とコミュニケーション

    第4章 物流ITシステムによる改善

    • 1.ITシステムによる業務改善への効果的な取り組み
    • 2.DX化に向けた取り組み
    • 3.ITシステムを導入してもヒューマンエラーはなくならない

    ※内容は、一部変更される可能性があります。



    鬼平犯科帳連載について

    JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」を1話ずつお届けします。息抜きにご一読いただければ幸いです。

    作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
    このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



    第13回 人足寄場

      平蔵は犯罪を取り締まる一方、江戸へ流入する無宿人に職業訓練を施し、就職をさせる人足寄場にんそくよせば設置を提言するとともに自らその建設と運営に当たり、犯罪の予防をも図った。93話「殿さま栄五郎」(『オール読物』昭和51年3月号。文春文庫14巻)には、その模様が次のように書かれている。
      平蔵は「近年の飢饉つづきによって、諸国から江戸へ群れ集まる無宿の者が跡を絶たぬ。なれど江戸の町は彼らのことごとくに食を与え、職を与えるわけには参らぬ。これらの窮民が無頼の徒と化し、盗賊に転落する者も少なくない。よって江戸へ入ってくる無宿の者を集め、これを一箇所へ収容し、仕事を与え、手に職をつけたら、彼らの更生と転落の防止の一石二鳥になる」と考え、老中・松平定信へ人足寄場の設置を建言した。
      しかし幕閣は「そのような小細工をしても、満ち溢れる浮浪の徒を収容しきれるものではない」と反対する。平蔵は苦笑して「浮浪の徒と口を聞いたこともなく、酒を呑み合うたこともない上の方に何がわかろうものか。何事も小から大へ広がる。小を見捨てて大が成ろうか」といい、ねばり強く建言を続け、ついに松平定信が断を下し、江戸湾の石川島に人足寄場を設けることになった。
      寄場は3棟の建物と浴場、病室等から成り、ここに収容された無宿者は約3年間、それぞれの職業を習い覚え、これなら正業につけると判断されるや、釈放されて世間へ出られる。
      ところで、この話は以下のような事実に基づく話なのである。
      寛政元年(1789)、平蔵が4月と12月に人足寄場設置の上申書を提出したころ、同2年2月、老中・松平定信は石川島に人足寄場を設置することを決定し、平蔵は人足寄場取扱の兼務を命ぜられる。
      これを受けて平蔵は次の諸点に苦心して、寄場の設置・運営に当たった。
      第一は寄場の早期開設である。平蔵は無宿人と佃島住人を動員して石川島の中州の埋立て、整地を始めるとともに小屋、長屋、船着き場等の工事を急ぎ、5月には寄場がほぼ出来上がった。これに伴い4月から無宿人の収容を始め、収容人員は4月1日に207名、5月初旬には390名を数えた。
      第二は原材料の調達である。平蔵は改易された武家の屋敷を貰い、寄場の建材に使い、また各寺に積み上げてある無縁仏の墓石を貰い、護岸工事に用い、さらに役所から古帳面も大量に貰い、再生紙を作り、市販する。
      第三は運営資金の確保である。初年度寄場予算は米5百俵、金5百両であったが、次年度は財政難で米3百俵、金3百両に削減された。そこで平蔵は定信の了承を得て同3年4月、町奉行と同席の上、物価を引き下げるよう江戸の主たる商人に命じ、御金蔵から借りた3千両で銅銭を買った。このため銭相場は1両に付き6貫2百文から5貫3百文に上がり、物価が下がったが、平蔵はすぐ金を買い戻し、御金蔵に返金した後の残金を寄場予算とした。この平蔵の切腹覚悟の投機がなければ、寄場は存続できなかったであろう。
      加えて平蔵は寄場の空き地を材木置場、かきがら置場、種炭置場として民間業者に賃貸し、寄場費用の3分の1を補った。
      第四は多様な職業訓練の実施である。平蔵は無宿人が就職したい職業の訓練を行うこととした。このため寄場外では、川ざらい、材木運搬、水運搬、御蔵人足、船頭、外使い、野菜作りの7職種の訓練、また寄場内では、大工、左官、屋根ふき、鍛冶、たどん作り、紙すき、表具、ろうそく作り、桶作り、竹笠作り、貝等の細工、彫刻、画工、足袋作り、草履作り、米つき、髪結い、煙草の葉刻み、女性には洗濯、裁縫、補綴ほてい、雑巾刺し、機織りの23職種の訓練が行われた。
      そして訓練作品が売れると、売上代金の2割を経費として差し引き、残金の3分の1を本人の貯金とし、貯金が一定額に達した時に釈放された。また残金の3分の2は毎月10日毎に本人に手渡されることになっていた。さらに就職者には開業資金の援助や職人道具の贈与も行われた。
      以上であるが、平蔵は寛政2年11月、寄場設置の功労で金3枚、時服じふく*2を賜わり、同4年6月、寄場取扱の兼務を解かれた際にも、御褒美として金5枚を賜わっている。
      なお平蔵が火付盗賊改めとして評定所(最高裁判所)まで伺いを立てて判決を出した事件は、天明7年4件、8年5件、寛政元年4件、2年9件、3年19件、4年26件、5年47件、6年67件、7年15件である。3年には葵小僧等の大盗を逮捕し、以後も治安悪化に対処して件数を上げ、6年10月に御褒美として時服3を賜わっている。また上の合計196件の事件数は抜群の成績で、7年5月平蔵が発病の際将軍より高貴薬を賜わり、御役御免が許可された際にも永年の精勤に対し金3枚、時服が与えられた(重松一義『長谷川平蔵の生涯』新人物往来社)。
      *時服…将軍から臣下に下賜かしされた時候にふさわしい衣服




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    2023年12月14日